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エドマンド・バーク「フランス革命についての省察」2

  • scallopshcolarship
  • 3月23日
  • 読了時間: 6分

更新日:4月28日

フランス革命についての省察

エドマンド・バーク 著  二木 麻里 訳

光文社 古典新訳文庫 2021年第2刷


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前回わかったとおりバークは名誉革命を高く評価しているため、名誉革命について復習します。


P65「一六八八年の名誉革命は、正義の戦いだけで実現されました。この革命はたんなる内乱ではなく、あらゆる戦争のなかで唯一正当でありえた戦いでした。」

P67「名誉革命がおこなわれたのは、古来議論の余地のないこの国の法と自由を保つためでしたし、わたしたちに法と自由を保障する唯一のもの、すなわち統治を可能にする古来の憲法を維持するためでした。」

P69「人びとのもっとも神聖な権利や参政権は、過去から相続した財産であると考える、わたしの国の揺るぎない方針」

 

 

名誉革命について(「もういちど読む山川世界史」より)

クロムウェルの軍事的独裁政治➩王政復古(1660年)➩審査法・人身保護法(チャールズ2世、ジェームズ2世の専制)➩議会主導でジェームズ2世からメアリ2世とウィリアム3世の統治に変えた。議会の提出した権利の宣言を王が権利の章典として制定。この出来事を名誉革命と呼ぶ。(1688~89年。イギリス絶対王政の終わり)議会の主導権を握っていたのは地方の地主層だった。

 

P72「それはわたしたちの自由を相続財産とすること、つまり祖先から伝えられ、また子孫に伝わるものとして自由を主張し、断言することでした。」

P72「革新を好む精神と言うものは、がいして利己主義の性格と視野の狭さからくるのです。祖先をかえりみない人は、子孫を思いやることもないでしょう。」 

P75「この自由には家系図があり、祖先の名があります。紋章もあれば紋章旗もそなわっています。画廊には自由の肖像画がならび、銘の入った記念碑も、記録も証拠も称号もあるのです。」

P75「フランスのどんな詭弁家も、理性と人間の自由とを維持するうえで、わたしたちがたどった道のりに優る方法を生み出すことはできません。」


 バークの主張をまとめると、イギリス人はフランス革命思想に惑わされず、イギリス憲法の精神を守り、祖先から子孫へ引き継いで維持していくべきだと。

 古い時代の王国の法からマグナカルタ、権利請願、権利宣言まで、イギリス憲法および法律には一貫した方針があり、統一性が保たれている。


 訳者も言う通り、この辺りがこの本の一番重要な箇所なんかな。詩のように比喩を交えてすらすらと文章が紡がれているので良いところを引用しようとするときりがない。一部だけ取り出すのが難しい。


 これを読むと「イギリスって立派な国なんだな~しっかりした統治機構があって、政治家はえりすぐりの知性と家柄があって、歴史と財産と名誉がある国なんだね~少なくとも18世紀当時は。」と思わせられる。3章「フランス国民議会の実態」では単なる優秀な弁護士だの医者だの田舎の聖職者だのは政治家にふさわしくないと主張していたりして、財産と家柄重視の姿勢がはっきりしている。国単位であれ、家単位であれ、代々受け継いできた重要な財産をもつものはそれを守り、維持拡大して自分の子孫に与えようとするので軽率な行動をしないし自然と国益にかなう行動をとるはずだという前提に立ち、貴族や地主などの由緒正しき財産家が政治家にふさわしいと主張している。


読んでいていくつか疑問が浮かんだ。

 政治家に必要な資質とは?バークの言う通り家柄と財産が重要な要素なのか?

 今ある統治機構を破壊すること(革命)は悪で、部分的に修正・取替をすることが最善なのか?

 国王を処刑するべきではないのはなぜか?(今のところバークは国外追放は良くて処刑はだめだと言っているように読める。)


 たしかに財産があるというのは人を動かしたり何か役に立つことをしたり頭がよかったりといった力の証明になる面があると思う。そして、それをぱっと散財してしまわずに代々引き継いで増やしてきたならその家の人たちは賢いのかな、とか普通の人よりものを知っているのかな、とも思う。だからといってそういう家出身の者が他の者より政治家に向いているかどうかは疑問・・。現代に貴族はいないので貴族とか地主が政治家にふさわしいかどうかもわからない・・。(逆に日本では世襲できる政治家一族が現代の貴族階級なのではとか揶揄されていることがありますけども。)このあたりいまいち賛同できないな。


 歴史のある議事堂とか宮殿があれば立派な国だと思ってしまうところはあるけど、人間は死んで消えていくからその議事堂とか宮殿が立っている周りに代々住んでいた人間がどんな暮らしをしていたのかとか知的な水準がどうだったのかとかわからないし。


ここで改めて、タイトルにもあるフランス革命について復習しよう。


フランス革命について(「もういちど読む山川世界史」より)

 

 革命前、絶対王政下のフランスは身分制度の社会だった。聖職者と貴族が特権階級で、残り九割が平民。もともとは身分と経済力が一致していたが、特権身分の間で貧しくなるものが出る、平民の中に商工業で成功したブルジョアジーが台頭するなどしていた。

 戦争により国の財政は破綻し、政府は貴族に課税をするなど旧制度の改革を試みたところ、貴族は王権を制限して自らの政治的発言権を高めようと結束した。貴族の提案により1789年5月に三部会(のち国民議会と改称される)が開かれると、特権身分と第三身分が対立。7月に民衆蜂起、各地で封建領主に対する農民一揆が巻き起こる。

 8月26日、国民議会が人権宣言を採択。人間の自由平等・主権在民・私有財産の不可侵といった近代市民社会の原理を表明した。

 1791年立憲君主制の憲法が公布された。

 

※バークの「省察」は1790年に刊行された。

 

 バークは自由平等と主権在民の原理に批判的で、身分制を支持して以下のように書いている。

P81「民衆は保護され満ち足りて、勤勉で従順な人々になり、どんな状況でも徳によって生まれる幸福を追求し、それを味わうことを教えられていたはずなのです。」

「人類のほんとうの道徳的平等はその徳のなかにあるのです。あやしげな妄想の中にあるのではありません。そうした妄想は、労働生活のなかでひっそりと歩みつづけるよう運命づけられた庶民の心に、偽りの思想やむなしい期待を吹き込むことで、ただ現実の不平等をさらに深刻で耐えがたいものにするだけなのです。」

「不平等は……この世のさだめが作り出した秩序なのです。」

P83「…、どれもすべては富と権力の病にほかなりません。これがフランスにおける新しい平等原理のひとつなのです。」


 次回は第三章「フランス国民議会の実態」を読んで、バークが政治家に求める資質について分析していきたい。ちなみにバーク自身もイギリスの政治家であった。

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