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エドマンド・バーク「フランス革命についての省察」

  • scallopshcolarship
  • 3月20日
  • 読了時間: 5分

更新日:4月28日

フランス革命についての省察

エドマンド・バーク 著  二木 麻里 訳

光文社 古典新訳文庫 2021年第2刷


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 去年読んでいたミル(”On Liberty”)は19世紀半ばに活躍したイギリス人で、今回のバークは18世紀後半に活動していた人なので、ミルよりさらに前の時代。 タイトルにあるフランス革命が1789年7月から10年間くらいで、この「省察」は1790年に刊行されたとのこと。保守思想の古典と言われるこちらを読むことにした理由は以下の通り。


①    日本の政治を見ていて、「もしかして自民党、絶対的与党ではなくなりつつなる・・・・?少しずつ、時代は変わっているのかなぁ」という思いを抱いたので、今後の自分の投票先とか政治を見る目を養う意味で。

②    アメリカで第二次トランプ政権が発足して、イーロンマスクがばっさばっさ既存の統治機構を改革しているらしい。大丈夫なんだろうか・・・。こういう急進的すぎる、影響が甚大な動きを目の当たりにすると、逆に保守主義を勉強したくなる。


今回読んだ箇所:P7~170

P589以降の「解説」と「エドマンド・バーク年譜」は常に参照しつつ読んでいる。


 本文長いので、超短くまとめてくれている「解説」、助かる・・・。この本は訳者の二木さんによって13の章に分けられていて、今回読んだのは1~4章の途中まで。第2章「イングランドの立憲主義と王政」(P34~P87)について訳者「解説」で“保守の神髄“と書かれており、印象に残った箇所も多いので以下の通り引用が多くなった。


印象に残った箇所:

P23「フランス革命は、かつて世界で起きたことのなかでも最大級の、驚天動地のできごとといえるでしょう。」

P43「『わが国の統一と平和と平穏は、神の恵みのもと、この王位継承権の確実さ』と維持することに『すべてかかっている』。これは王位継承権の僭称につながるあらゆる疑義を防ぐものです。」「王位を継承する資格に疑義が生じれば選挙ときわめて近い状態になってしまうでしょうし、選挙になれば自分たちが重視する『この国の統一を平和と平穏』をまさに破壊することになる」

P45「道徳的な意味における権限の限界がどこにあるかは完璧に認識できます。そのときどきの恣意的な決定をひかえて永遠の理性にしたがうこと、また信頼や、正義や、確固とした基本政策の維持など揺るぎない原則を守ることです。」「この道徳的限界は、国家においてあらゆる権威を行使する人びとを完全に拘束するものです。肩書きの違いも、身分の違いも、そこにはありません。」

P54「わたしたちの自由がきちんと永続し、神聖なものとして受け継がれるためには、王権の世襲継承に優るものはありません。」「王位の世襲という道はイングランドの憲法の健全な習慣であるといえます。」

P55「いまはこの扇動的で憲法に反する教義がおおやけに説かれ、主張され、印刷されています。・・・そうした変革や革命に対して、私は嫌悪を感じます。」

P56「イングランドの国民は・・・・・・・・いま現にある国家の枠組みに計りしれない価値を認めていて、・・・・」

P58~「『失政』は王を追放する条件として曖昧すぎる」という訳者による小見出しから始まる箇所はとても重要だと思う。何度も読み返したい。


歴史的な背景についての調べもの:

Peter, Hugh / イギリスの牧師。新大陸に渡り、植民地建設とハーバード大学創立に尽力。イギリス帰国後、清教徒革命に際し議会派の従軍牧師として活躍した。王政復古後、国王チャールズ1世の処刑*を教唆した疑いで処刑された。(ブリタニカ国際大百科事典)


*チャールズ1世の統治中に“権利請願”が提出される➩無議会政治・イギリス絶対主義王政末期➩1642年秋清教徒革命勃発➩1649年チャールズ1世処刑される。

 

 バークは「省察」の初めでフランス革命を受けたプライス博士の「説教」を批判しており、清教徒革命によるチャールズ1世の処刑と、フランス革命及びそれに感化された“国民が王を選ぶ”という思想を重ね合わせて見ている。

 

宗教的な背景:

イギリスの宗教についてよく知らないので軽く調べてみた(主にブリタニカ国際大百科事典とニッポニカ日本大百科全書で。)


 イギリスには、イギリス国教会/イングランド教会(The Anglican Church / The Church of England)というものがあるらしい。

 16世紀まではローマ教皇を頂点とするローマ・カトリック教会に従っていたが、ヘンリー8世の時代にローマ・カトリック教会から離反。その後復帰したりして、エリザベス1世時代に「教義的にはプロテスタント、教会政治と礼拝様式上はカトリック」といわれる国教会体制が確立したとのこと。この後17世紀には清教徒革命が起きるので16世紀以降は国教と清教が拮抗して争っていたのかな。清教徒革命後、イギリス統治は共和制となるが、11年後に王政復古。国教会も復活する。


感想・考察:

 まだ歴史的背景とバークの立ち位置について整理しきれてない。調べものに時間がかかって、考察とか書くほど自分の中で消化しきれてない。こんなペースでは、10冊足らずの積読を消化するのに何年かかることやら・・・・。でもそこが大事なところでもあると思う。何年後でも、通用する本を選べってことだから。

 この「省察」は、フランス革命思想をイギリスに持ち込む必要はない、フランス革命は見習うような良いものではない、という趣旨の本だと理解した。

 革命の最中やその後しばらくは、巻き添えでたいして罪のない人々が虐殺されたり、独裁者が恐怖政治を行ったりがあるから、歴史的に見て仕方のない流れだと思われることでも、その功罪両方あることは否定できない。

 バークは王の世襲とその統治にとても重たい価値があると考えていた。なので、フランス革命で王権による統治が否定されたことに拒否を示し、王による統治と憲法による統治及び国民の自由は矛盾せず、それどころか不可分なものであると説いた。

 

 いいとこどりはできないものか。絶対王政には耐えられないとして、革命の後に独裁者や恐怖政治を生まずに平和な統治が続く方法はないのか。バークは名誉革命がそれだと思っているんだろうか?

 あと、日本に明治維新好きが多いのは、明治維新をそういうもの(成功例)だと思っているからなのかな。

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