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フランス革命についての省察7

  • scallopshcolarship
  • 8月10日
  • 読了時間: 4分

フランス革命についての省察

エドマンド・バーク 著  二木 麻里 訳

光文社 古典新訳文庫 2021年第2刷


**古典を読もうキャンペーン中**


読んだ箇所P427~497


 この本を読んで感想を書くのに時間がかかりすぎている。もちろん読むたびに書き留めておきたい大事なことが見つかるんだけど、長い本なので前読んだところを忘れたりし始めていて。この本の感想を最後まで書ききることに対するこだわりがだいぶなくなった。次はアナキズムの本とリベラリズムの本を消化したい!


 結論として、読む前と比べて保守主義に対する印象が変わったので読んで良かった。日本には今貴族制度がなくて、保守の“皇室を敬う”という言葉を聞くと本当に天皇とそのご家族のことしかイメージできなくて一神教的な極端なイメージだった。あと、保守というと長老的な高齢男性が語ることに従う集団というイメージで、従えないなら去れ、という全体主義が当然の価値観だと思っていた。


 バークの保守主義は絶対王政支持ではなかった。王家以外に貴族や聖職者、様々な種類の特権を持つグループが存在して、それらの利害対立と利害調整を当然のこととしている。また、平等には否定的だけど、自由はある程度尊重している。

 自由と平等ってセットで思い浮かべがちだったけど、別に必ずしも両立しない概念だったんだなっていうのが納得できてよかった。自由の結果不平等になることもあるし、平等の結果不自由になることもある。


 今回読んだ箇所は「10 国王の立場-形骸化した下級官吏」と「12 軍部と民衆-制御不能」が中心。民主的な思想が兵士や農民らに広がると、軍の命令や徴税に従わせる根拠がなくなるだろうと書かれている。さらにその思想を広げていけば、植民地に移った人々やその地域の先住民も中央からの命令に従わなくなるが、それにどう対処するのか。現状軍隊で鎮圧しているようだが、それは自分たちが言っていることと矛盾しているし、兵士たちが上官の言うことを聞かなくなるもの時間の問題だろうと書かれている。


 ちなみに、革命前のフランスでは官職はお金で売買できたり世襲制だったり、今の国家公務員制度とかなり違っていた。すごく名誉あるもので、国王に対する忠誠心が伴うものだったらしい。ただし、王と貴族官僚の利害対立もあって、高等法院というところは“貴族の牙城”とされていた。この辺りは先日も書いた「フランス史 福井憲彦 編 山川出版社」や他の方がネットに公開されている歴史の情報などで知った。

 その前提知識がないとバークが「国務大臣という地位は最高の名誉をともなう」(P438)とか「高貴な機能」(P445)とか、P446以降で高等法院について書いていることがぼんやりとしかわからなかったと思う。


 また、軍隊についての記述も自分には新鮮だった。軍隊・戦争ってやはり国レベルの政治・統治を語るうえで欠かせない要素だと改めて認識。平和な時代が続くと、特に今って従業員の心身の健康について会社まで一応は気遣ってくれるような時代なんで、死者が出る前提の戦争の話ってものすごい非日常性がある。

 P366に印象に残った記述があって「かつてヒュームは、制作原理の秘密をルソーから学んだとわたしに語ってくれたことがあります。エクセントリックではあっても鋭い観察者だったルソーは、読書の心を一撃して注意を引くには、驚異を作り出してみせなければならないと気づいていました。」…(中略)…「政治と道徳において目新しい予想外の衝撃をあたえるものだけだというのです。」というとことなんだけど、戦争が非日常になりきった現代では、戦争ものが大うけするかもしれないし、戦争反対でも戦争ものに対する教養はあった方がいいかもしれないね。


 最後に

 訳者である二木麻里さんについて検索してみたら、素敵なページが出てきました。


 せっかく自分もホームページをやっているんだから、「リンク集」のページを作ろうかな。大学の先生のページは面白いな。

 
 
 

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