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フランス革命についての省察6

  • scallopshcolarship
  • 3 日前
  • 読了時間: 7分

フランス革命についての省察

エドマンド・バーク 著  二木 麻里 訳

光文社 古典新訳文庫 2021年第2刷


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読んだ箇所

P361~425


P369「古い制度では、それが理論から逸脱した場合にそなえてさまざまな矯正手段がみられるものです。こうした矯正手段はさまざまな必要性と便宜的な都合によって生まれたもので、理論で構築されたものではまったくないことが多いのです。逆に理論のほうがこうした矯正手段から生まれるのです。」

“省察”を通して繰り返し説明されていることの一つで、古い制度は複雑で、だからこそ価値があり、破壊してはならないということ。長い運用の過程で修正と変更が行われて現実に適したものになっているのに、それを無くして新しい理論に基づくシンプルな制度を一から作るのはばかげている。バークからすれば、新しい理論よりも人類の経験の方が絶対に優っている。


P394~訳者による小見出し「立法者は人間の自然な性質を理解する責任がある」


 人間の平等を唱え身分制を否定した革命派に対し、人間の区別をなくし”均質な国民”という概念だけで、どうやって統治するのか?と批判している。治世者は市民を身分制や職業によって分類し、それぞれの特権と地位におくことでよく統治できるのである。


P397「こうした身分分類は、適切に秩序づけさえすれば、どんな統治形態でもまちがいなく好ましいものなのです。専制主義の行きすぎを防ぐ強力な防壁になりますし、共和国というものに実効性と永続性をもたらす必要手段でもあります。」


 王以外はすべて平等な市民とした場合、王にのみ特別な権力が残るため専制になりやすくなるということが説明されている。貴族や聖職者などの権力的中間層がいた方が苛烈な専制の抑止力になるということ。

 ここは確かにそうだなと思った。日本では今皇族の数が減っているけど、それに絡んで皇族と平民が結婚することは相当難しいという話を聞いた。昔は華族からお妃候補を選んだけど、今は自由恋愛で一般人が突然プリンセスになるのでその過程で大騒ぎになり、テレビやネットでバッシングされることもあり普通の神経では耐えられないという。ポコッと一つの階級だけ特出しているような身分制度は続かないんだな。余談だけどこれは経済的な理由のみによる階級制度でも同じじゃないかな。


P410「(前略)国家にまだ残されている権力と権威と影響力はことごとく、なんであれいやおうなくこの紙幣の管理と統括にたずさわる者に握られることになります。」

 銀行がアニシア紙幣の管理と、アニシア紙幣(当初は国債でもあった)の担保とした土地の売買を行うことで国の富の価値を不安定にさせているという。

P411「いまではこれらの土地は紙幣の流通がもたらす悪のなかでも最悪の、最も致命的な悪、すなわち極度の価値の不安定性という特徴を帯びるようになりました。」

 土地と通貨の価値が不安定になることで、都市の少数の者だけが利益を得て、多数の、特に田舎の地主や農民が餌食になるという。

P418「みなさんは貨幣と土地の流通を支配するほんものの権力をどこに配備したのでしょう。」「すべてのフランス人の所有物の価値を一○パーセントも上下させる手段を持つような者は、それこそすべてのフランス人の主というしかありません。」「この革命で獲得されたすべての権力は、都市の中流市民、とくにかれらの先頭に立つ富裕な支配者たちの手に落ちることになるでしょう。」


 教会から没収された土地が売却されたことについての批判。確かに、今まで売却されることのなかった、国土の二○パーセント*(山川出版 フランス史 下 P17より)にも及ぶという土地が売りに出される可能性が出てきたら、その値段はどうなるんだろう。国土を担保に国債を発行するってすごいな。革命前のフランスは財政破綻に近い状態だったとのことで、調べてみたらジョン・ローのミシシッピ会社事件(1717年~1720年)の前からすでにフランス国債の信用は落ちていたらしい。土地の値段が革命前後で上がったのか下がったのかはネットでちらっと調べただけではわからなかった…。アニシア紙幣の価値がどんどん暴落してものすごいインフレになったのは確かだ。


とても面白い記事があった: 「セレスタン・ギタールの日記から探るフランス革命期の貨幣事情」https://note.com/shelk/n/n38711e641ac7


 軽く調べただけだけど、アニシア紙幣が暴落したのは絶対王政時代から国家財政が破綻していたからであって、革命のせいではないように思えた。そして、ハイパーインフレによって貨幣階級も損害を被った。


P390「この計画をご覧になれば、そこにはフランスをさまざまな共和国に分裂させ、それらの共和国をたがいにまったく独立したものにするような直接的で端的な傾向があることがおわかりになると思います。そこには国家体制をつうじて一貫性と結合と従属関係が作り出されるような手段がまったく定められていないのです。」

P391「(前略)…由緒ある国にみられる宗教と政治と法律と習慣のなかに残されたあらゆる痕跡を拭い去ることをめざす政策を採用しました。」

P392「(前略)自由をあたえるという見せかけのもとで、その統一の絆を破壊したのです。」

P422~”パリ市の優越性”

P423「フランスでパリに対して従属的地位に置かれたこれらの地域には弱さと分裂と混乱しか残されていません。」


ここからは「フランス史」 山川出版 福井憲彦(編著)下巻 の抜粋

P41「アンシアン・レジームにおいては、人々は職能、地域、身分などに基づく「中間社団のなかで暮らし、国家政治はこれらの社団を通じて社会を掌握していた。革命はこうした特権的身分や自律的な社団を否認し、個人を国民として直接把握するとともに、国民を政治主体として認知しようとした。」

P38「ことばや慣習もまた、全国的に同一のものになる必要がある。それが自由と平等の基盤だ、と革命家たちは考えた。」

P42「国民国家の理念は、平等の実現という理想と結びついて、かえって、革命の中心パリとは異なる歴史的過去や文化をもった地域にたいしては、中央にならうべきだという圧力として作用した。」


 新しいフランスを作ろう、平等で自由な社会にしようという理想を実現しようとしたとき、なぜか国中をパリに習わせ、人々を均質化させるような作用が生まれてしまったようだ。

 孫泰蔵さんの「冒険の書 AI時代のアンラーニング」を読んでいても、すべての子どもに対して社会に出るための平等な機会を与えようとする公教育が、子どもの関心を無視して社会(大人)が必要と考えるカリキュラムを押し付けることで自由な学びを縛っているという趣旨のことが書かれていた。


 どうして自由を広めようとすると均質化の押し付けになるのか?  私見だけど、時間と資源が限られていて本当の自由はすぐに実現できないので、とりあえず多様性は置いといて前(アンシアン・レジーム)よりましな社会にみんなで移行しようとしたんだと思う。一部の人たちが“私たちは現体制(アンシアンレジーム)に満足してます”と言っても認められないし、“公教育より教会がいいです”と言われても困る。

   これは、教育について考えるとき“自由を尊ぶなら子どもに先入観を与えるような親の価値観を教えるべきではないのでは?”“親の道徳を子どもに押し付けていいの?”という問題が出てくるのと似ている気がする。何も教えず”その都度子ども自身がちゃんと考えて判断しよう”、はもしかしたら将来立派な哲学者に育つのかもしれないけど当面の生活に支障をきたしてしまう。だからとりあえずは家庭で親なりの判断基準を教えあげて、自分で考えられるようになったらそこからはそれを尊重しますというやり方が穏当だ。

 「自分で考えられるようになったら」の見極めと「親なりの判断基準」を作るのが難しいって話だけど…。


 フランス革命については日本でも書いている人が多くて、ネットでちょっと調べただけでも面白い記事いっぱい出てくる。感謝なり。

 
 
 

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