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松尾隆佑
​「政治理論」シリーズ

​         解釈まとめ

ホワイトロックス

政治とは集合的意思決定を通じた集団の秩序化である。

集団の単位は国や自治体、法人など明確に定められたものに限らない。

権力(ケイパビリティに影響を及ぼしうるもの)のあるところに政治が発生し、

権力をもつものとその影響を受ける者が政治単位(ステークホルダー共同体)を構成する。

(被影響利害原理)

集団の構成員はそれぞれ固有の利害関心に従いながら自律的に行為する存在である。

集団が集合的決定を行う際には、集団構成員を政治的に平等に取り扱い決定に参加させる“集合的な自己決定(デモクラシー)”が望ましい。

理由:

  1. 各構成員の能力に大差がないとすれば、少数者に決定権限を独占させるよりも全員*を決定に参加させた方が各自の利害を追及しやすくなるため。

  2. 意思決定に参加できなかったにも関わらず決定によって影響を受けることは、その個人の自律を脅かすことになるため。

  3. 全員が参加できることによる幅広い代表性の確保が、統治を手続き的に正統化し、結果社会を安定化させることにつながるため。

*政治主体:自己意識を持つ現役世代。自律した利己的な個人であることが望ましい。

         また、「語りえないステークホルダー」にも「代表」される権利がある。

現代のように複雑・多様化した市民社会を安定的に統治するには、専門家による統治や法的境界に基づいた集権的な統治ではなく、多元的な政治単位(ステークホルダー共同体)に基づき、利害関係者を過不足なく包摂し幅広い代表者が参加した熟議による統治の方が望ましい。

決定に至るため、集団構成員は自らの政治的代表を選び、選ばれた代表が熟慮と討議を意味する「熟議」と投票を行うという過程を繰り返す。

さらに、意思決定過程を公開したり意思決定過程に手戻りを許容したりすることは統治の手続き的正統性や有効性を高めさせる。

代表には権威と答責性が備えられる。

代表は選挙と領域の観点から以下の3類型が挙げられている。

  1. 国政選挙など「選挙的・領域的」な代表性である「代表制デモクラシー」

  2. ステークホルダーがオンラインで各政策について直接投票する「選挙的・脱領域的」な代表性である「液状/分人デモクラシー」

  3. 「非選挙的・脱領域的」な代表性としてマクドナルドの提唱する「グローバル・ステークホルダー・デモクラシー」

 

科学的な知見を踏まえつつ熟議を行い、最終的には全員一致もしくは多数決により決定する。

決定された政策が科学的および哲学的に正当化できないものであっても、正しい価値*に基づき正しい手続きによって決定されたならば政治的に正当化される。

*規範理論的には、政策を決定するものは「リベラルで民主的な価値」(人権の尊重や立憲デモクラシー)を共有しているべきである(公共正当化)。人権は「ケイパビリティ」の獲得および向上に裏付けられた自律によって実現される。

政治的共同体が維持・再生産されるために、個人の自律を普遍主義的福祉によって支えることは共同体全体の義務である。

 

ただし、基本的価値観を共有しているという条件のもと、各構成員はあくまでも自らの利益を求めて決定に参加する。

 

統治における国家権力の役割に関しては、法的な許認可及び処罰と経済資源の配分に加えて、行政の機能を民間に移すにあたって委託先の資格や能力を評価する機能や、社会の必要に対応するためにどのような主体がどのように行動するべきかを計画し、各主体の行動を調整し全体を統括するという機能が重要になってくる。

そして、脱領域的に遍在する非国家主体の権力はステークホルダー共同体によって統治すること(ステークホルダー・デモクラシー)が有力であると提案されている。

さらに、国家や自治体・行政区などの地理的境界をもつ権力主体についても、コミュニティの脱領域化や被影響利害の観点から構成母体をとらえなおすことができる(住民票に基づく地位からステークホルダー・シティズンシップへ)。

 

統治権力を立法権・執政権・司法権に分けて相互に監視・制裁の関係を持たせあうことは統治に民主的正統性を持たせるための条件の一つである。

司法権についても被影響利害原理及び自己決定の原理を重視すると、ステークホルダー司法により紛争解決能力の一部を市民社会内部に取り戻すことが提案される。

 

公共権力は常にステークホルダーの範囲の見直し、異議申し立てに途を開いておくべきである。

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